湿地Ⅰ

 貧栄養型の低茎湿生群落、中茎のチゴザサ-マアザミ型群落、水域のジュンサイ-ヒツジグサ群落が主な構成要素となっています。また、この湿地で滲出してきた地下水が他の湿地を潤しています。かつては水田として利用されていました。

 トップページの写真も湿地Ⅰです。
 湿地周辺の斜面に降った雨水は湿地縁部の各所から滲出水となって出てきて、全域を湿地状態にしています。また、この水は湿地Ⅱ、Ⅲ,Ⅳ、人工湿地に流れて湿地を形成しています。
 湿地Ⅰの南西部一帯は以前は水田(湿田)として、湿地周辺は草原および薪炭林(里山的利用)として利用されていました。昭和中期以降は利用は停止され、野焼き管理だけが継続されましたが,次第に遷移が進み、湿地の半域が高さ1~1.5mの低木林状態(下の写真:ネジキ低木林:当時の群落を部分的に残しています。)になりました。平成17年からの再生事業で低木林を除去し、現在の植生状態になっています。
 水田として利用していなかった部分は養分が少なく土壌もごく浅い状態で、以前から貧栄養型の低茎湿生群落が生育しています。ここにはミミカキグサ類、モウセンゴケ、イトイヌノハナヒゲなど小型の植物が生育しています。一方、水田として利用していた部分は土壌が厚くなって養分も多くなり、高さ40~60cm程の中茎の湿生群落が生育しています。この群落は樫原湿原で最も広くみられるものですが、他の中山間地域の湿原でももっとも普通に見られるものです。ここにはマアザミ、チゴザサ、サワヒヨドリ、ヒメミクリ、ゴウソ、ミズオトギリ、ヌマトラノオなどの中型の植物が生育しています。トキソウも主にこの群落内に見られます。低茎群落は中茎群落へと連続的に変化し、中間的状態の部分にはコイヌノハナヒゲが特徴的に生育しています。サギソウはこの部分に最も多く見られます。水域は以前はもっと狭かったのですが、市道建設後に現在の面積に広がっています。ここにはジュンサイ、ヒツジグサが広く生育する他、浅い水域にはコウガイゼキショウ類が群落状に見られます。水域の基盤の深さは80cm前後ですが、次第に土砂が堆積し、見た目の水深は20cm程になっています。そのため、毎年少しずつ浚渫が行われています。