湿地Ⅱ

 ヌマトラノオ群落、チゴザサ-マアザミ群落、オオミズゴケ群落、水生群落が主な構成要素となっています。。溜め池として利用され、水域の基盤は深さ2mを超えます。以前は村の子ども達がここで泳ぎ、中の島側を通る観察路は、杉山、佐賀方面に行くための里道として利用されていました。

 基本的には市道側から中之島側にかけて傾斜し、水域部分が最も深くなった谷地形です。水域部分は2mの棒を挿しても基盤に達しません。水田としては使えず、古くから溜め池として利用されてきました。昭和期には子ども達が泳いでいたと言うことですが、今は土砂が溜まり、見た目の水深は20~30cm程度になっています。これまで何度か浚渫が行われていますが、土砂の堆積による浅化が進行しています。そのため、毎年少しずつ浚渫が続けられています。
 水域はジュンサイの純群落状態になっていますが、以前はヒツジグサも多く見られました。水域に土砂が堆積することで茎を伸ばせないヒツジグサは減少したようです。一方で、ここ数年続けている浚渫域ではヒツジグサが復活し始めていますので,今後が期待されます。水域と湿原域の境界部分の浅い水域には近年ハリコウガイゼキショウ群落(写真手前の右半分域)が急激に増加し、水域面積を減少させつつあります。この部分は樫原湿原の中でも最も植生変化が早い所です。現在、植生変化を注視しています。水域には他にシズイが見られます。九州では稀な植物ですが、樫原地域では水田にも生育しています。
 湿原域はヌマトラノオ群落、チゴザサ・マアザミ群落、低茎湿生群落の順にベルト状に分布しています。この分布は立地の水分量と連動しており、市道側になるほど水分量は少なくなり、ヌマトラノオ群落が最も乾いた部分に成立しています。ヌマトラノオ群落の横は一般的な草原になっていて、カキラン、ユウスゲ、コオニユリなどが見られます。
 湿地の下部半域ではチゴザサ・マアザミ群落、低茎湿生群落の多くがオオミズゴケに被われて劣化または消失しています。オオミズゴケが侵入するとやがてマット状の群落になり、小型の湿生植物から次第に生育できなくなります。オオミズゴケの厚さが10cmを超える頃にはヤマアワなどの一部を除いてほとんどの湿生植物は消えてしまいます。オオミズゴケの増加は湿原劣化の主要な原因の一つになっています。そのため、平成17年からの再生事業では、オオミズゴケ群落を剥ぎ取る取り組みが各所でやられましたが、湿地Ⅱでは剥ぎ取り後に低茎群落のコイヌノハナヒゲ群落が再生してきました。剥ぎ取りは湿原再生の有効な手段で、現在も少しずつオオミズゴケ群落を剥ぎ取りながら元の群落の再生が誘導されています。一方で、オオミズゴケによって劣化した部分も一つの典型群落として残されています。下部域中央のオオミズゴケ-ヤマアワ群落、右側木道沿いのオオミズゴケ-イヌツゲ群落がそれです。
 また、湿地Ⅱではハッチョウトンボを比較的多く見ることが出来ます。