湿地Ⅳ

 中茎のヌマトラノオ群落、チゴザサ・マアザミ型群落が主要な構成要素ですが、上部域には部分的に貧栄養型の低茎湿生群落が生育しています。また、下部域ではマコモが多くなり、高茎群落的相観になっています。中の島側の縁部にはややベルト状にオオミズゴケ群落が分布しています。春期には全域がミツガシワ群落になります。

 昭和中期頃には、ミツガシワは湿地Ⅳの中部域だけでしか見られませんでしたが、次第に増加し、現在は湿地Ⅳ全域に密生する状態になっています。また、同時に湿地Ⅰ、Ⅱにも広がったようです。ミツガシワの根茎は地下に密生し、スポンジのような構造をつくっています。そのため、湿地内は人が歩いても沈まない堅さになっています。ミツガシワの生育域の多くはチゴザサ-マアザミ型群落が分布し、春期にはサワオグルマの黄色い花が多く見られます。夏にかけて他の中茎の植物も大きくなり、それとともにミツガシワは少なくなっていきます。湿地Ⅱから流れ込んできた水は主に中の島側に集まってやや水路状になっていますが、この部分にだけは年間を通してミツガシワの生育が見られます。
 湿原内はヌマトラノオ群落の端で一段低くなっていますので、現在ミツガシワが分布する地域は古くは水田として利用していたことが推察されます。平成17年の再生事業開始時にはヨシが多く見られる状態になっていましたので除去作業が行われ、現在のようになりました。下部域は養分が多く、群落の高さは1mを超えますが、次第に高くなる傾向がみられます。そのため、夏場に刈取を行って遷移を退行させる取り組みが行われています。
 中の島側の縁部にはベルト状にオオミズゴケ群落がみられ、そこにはヤマドリゼンマイやミヤコイバラが生育しています。また、ミソハギ、シロバナサクラタデなども湿地Ⅳに多く見られる植物です。