チゴザサ・マアザミ群落が生育する環境の中でも取り分け水分の多い立地にみられます。時には水域状の立地にも生育し、湿原の水分環境の指標となる植物です。和名の水弟切は生育地の特性に由来します。
楕円形の葉が交互に対生(十字対生)し、その付け根に数個の花をつけます。花は1日に1個ずつ咲いて、次の日にはしぼみます(一日花)。写真を撮りに来た人がなかなか花に出会えないと言いますが、じつは開花はみんなが帰る夕方頃から。黄昏前後に活動する虫たちを狙った時間設定です。それに合わせなければ花を見ることは出来ません。また、この仲間の花は通常黄色ですが、本種は薄い桃色で異なります。控え目で、この色の方が夕暮れの湿原には合うように感じます。
花期:8月下旬~9月 高さ:30~60cm
分布 国内:北海道~九州
国外:朝鮮半島、中国、ロシア沿海地方
オトギリソウ科 オトギリソウ属 水弟切
Hypericum crassifolium (Blume) Nakai
(synonym :Triadenum japonicum (Blume) Makino)
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<少し詳しく>
学名はYリストに従いましたが、図鑑類等、一般に Triadenum japonicum (Blume) Makino が使われているようです。
Triadenum(ミズオトギリ属)は、1)花弁の色が淡紅紫色、2)雄蘂9個、花糸は3個ずつ3束に分かれ、中部付近まで合生する、などでオトギリソウ属と区別される、とされています。(文献:1)
左の写真で雄しべが3本ずつ基部でくっついているのがわかるでしょうか。
文献:1 改訂新版 日本の野生植物3 p.234