樫原湿原の開花情報をお伝えします。
2024年(令和6年)
<Flowering Information>
過去の開花情報はこちらをクリックして下さい。
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11月13日
守る会小屋の開花情報板も、1年間、書いては消し、書いては消しで随分汚れてきました。どことなくくたびれていて、書かれている情報も何となく名残り花の雰囲気が漂っています。
「今は何が咲いていますか?」
「もうほとんど終わって、大したもんはありません。リンドウの残り花ぐらいですかね」
最近の、来訪者との会話は概ねこんな感じです。湿原の花ももう終わりで、後は草枯れの風景に変わっていくだけです。(湿原の草枯れは普通の草原より早く始まります。)季節の移ろいを、何の疑いもなく受け入れ、「もう、今年も終わりだな」と誰もが思ってしまう雰囲気です。・・・
でも、ピュアなセンサーを持った人の目は違っていました。「良いのが撮れましたよ~」と言ってkanadeさんが見せてくれた写真に驚き! 「こんな世界があったのか!」と、常識の感覚(花は花びらがあって、雄しべがあって、雌しべがあって、・・・)でしか見ていなかった自分の感性を猛省。「なんでそんな目で見れるんですかね?」
先日までみんなが写真を撮りたがっていたウメバチソウですが、今はもうほとんど相手にされていません。kanadeさんの写真を見ながら、ウメバチソウの美しさとは何だったのだろうと考えてしまいました。あの花から、キラキラした仮雄蕊を取り除いたら、雌しべを取り除いたら、花びらを取り除いたらどう見える?と、一つ一つ要素を確認。・・・・、それぞれに個別の世界、美しさがありました。花全体を「花」として見る常識、それはそれで良いのでしょうが、その中に、さらに新たな宇宙が広がっていました。王冠のような仮雄蕊、小さくぴゅっとつき出た柱頭、葯を落とした後の白い花糸の広がり、それぞれに美しさを感じてしまいます。・・・などと深入りしすぎると、管理人は変態?と言われそうですから、この辺で止めておきます。ともあれ今日は、「常識の呪縛」から開放されることの大切さを学びました。
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11月4日
湿原の花は日に日に少なくなっていますが、リンドウだけはそこら中に咲き乱れています(ちょっと言い過ぎ?)。木道をしばらく進むと、「もうイイです。」と言いたくなるくらいで、誰もが見飽きて、後では素通りする状況です。そんな中、Kanadeさんがとんでもないものを見つけてくれました。
誰もが知るリンドウの花は、花冠の先が5枚に分かれているのが当たり前。その数が動くとは全く思いもしていませんでした。ところが、2枚目の写真を見て下さい。一番上の花から時計回りに、裂片の数は5枚、7枚、6枚、8枚。1花茎の上で大混乱です。「へぇ~、こんなに動くんだ!」と大感激でした。あらためて、「当たり前」を丁寧に見ることの大切さを思い知らされました。
帰宅してから確認してみると、平凡社の日本の野生植物Ⅲには「花冠は鐘状筒形でふつうは青紫色まれに黄色で,先は5裂(まれに6-8裂)し,裂片間に副片がある。」と記載されていました。図鑑類の記述は読むのが何となく面倒くさいのですが、一字一句が意味深長で、無駄な表現はないと再認識しました。
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10月20日
今年初めてのリンドウが開花しました。ツルリンドウは林縁の各所で見られます。ウメバチソウも花数が多くなってきました。秋の深まりを感じます。
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10月18日
アケボノソウの花は今月末頃までは見れるでしょう。リンドウの仲間ですので花は筒状(花冠)で、深く裂けています。通常、その数は5枚(裂片は5)ですが、4裂や6裂も見られます。以前確認したら3裂から9裂までありました。どうも、裂片の数は安定性が弱そうです。
2.は基本形の中に4裂片の花が混生していました。雄しべの数、萼の数も4で、そろっていました。3.は6裂の花。ただ、雄しべは1本だけ2本が接合した奇形です。5.はその花の裏側。何と萼は5枚です。裂片と雄しべと萼で数が乱れています。4.は6裂ですが、何かおかしいです。分かりますか? 下側の裂片の蜜線の数が3個です。こうやって、丹念に見ているとアケボノソウの花は意外と不安定のようです。
6.は蜜線に群がるアリの群れ。アリはここでお腹いっぱい蜜を吸って巣に戻りますので、花粉を他の花に運ぶことはありません。アケボノソウにとっては全くの「蜜泥棒」です。自然界でそんな都合の良い話はあまりないわけで、アリも何らかの仕事をしているはずと思うのですが、どうも確実な話は見つけ出せません。アケボノソウがこんなにも無防備にアリにやられっぱなしとは考えられませんよね。何かアケボノソウの戦略がありそうですが・・?
ところで、アケボノソウの語源ですが、「裂片の多数の黒点を白み始めた夜明けの星々に見立てた」という説明が多くの資料に出てきます。”ほんとかな?”といつも思います。だったら、あんなに目立つ2個の腺点の方が何かに例えられそうですが、これについては何の話も無し! どうも合点がいきません。それより、1.のように、「白いたくさんの星形の花が明け方の弱い光の中でキラキラと輝く様を曙の星空に見立てた」という説の方に賛成の1票を入れたいです。 残念ながら、これと言った定説はなさそうで、それがまた良いのでしょう。
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10月4日
アケボノソウが咲き始めました。人工湿地周辺と湿地Ⅱの中の島側木道沿いに数個体ずつ見られます。いつもの年はもっと多いのですが、今年は随分少ないようです。湿地以外の林内生育地でも同様です。今年の夏の暑さと乾燥のせいでしょうか?
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9月8日
久しぶりにヒツジグサが元気に咲いていました。最近はジュンサイに追いやられてすっかり花数が少なくなっていたので、つい撮ってしまいました。ヤマハギやクズの花も丁度盛りで、秋の七草の季節到来を感じます。
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9月4日
湿原にはサワヒヨドリ、サワギキョウ、オミナエシ、オトコエシなど、背の高い草花が目立っています。そんな中、水辺のミズオトギリの花を探して来訪される方も少なくありません。肉眼で見ると小さく、少し地味に見えるのですが、拡大すると淡いピンクの花びらと、その中に王冠のように並んだ雄蕊が綺麗です。この花のとりこになってしまう人が多いのがよく分かります。
図鑑類には、「雄蕊は9個, 3束にまとまり,なかばまで合生する。仮雄蕊(腺体)は3個,鱗片状で卵形~円形,榿黄色,全縁。花柱は3個」との説明があります。上の写真、かなでさんが、見事な写真を送ってくれました。典型タイプです。花柱が3本、分かれているのも分かります。有り難うございます。
ところで、「雄蕊9個、3束にまとまり」の部分ですが、樫原湿原では下の写真の様に9個にならない変異型タイプが少なからず見られます。場所によっては典型タイプを探すのに手間取る程です。「ピンクがよく撮れた。よし!」と思って拡大すると、「いかん、雄蕊の数が合わん!」となります。ま、あまりこだわらない方が良いですかね。
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8月7日
ホザキノミミカキグサを攻めて見ました。葉の付き方、花柄の長さを確認しました。葉の形は環境(水分量)によって異なるようで、他種との区別は今後の課題かなと思います。
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8月5日
湿地Ⅱの中之島側木道沿いにはコバギボウシの群落が満開です。これだけ咲くとちょっと圧巻、一見の価値ありです。
市道下の草原にはオミナエシが咲きそろいました。以前はススキ優占の高茎草原で個体数は少なかったのですが、適当な刈取を継続して、次第に数が増えてきました。それと呼応するようにブルービー(ルリモンハナバチ)も多く見られるようになってきました。今年はまだ個体数は少ないですが、見かけるようになってきました。これからお盆にかけて、超望遠のカメラを持った来訪者が増えてくることでしょう。
サギソウももう少し増えると思います。
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8月2日
一時期、急に増加傾向を示していたサワギキョウですが、最近は落ち着いて、少し減少を感じるようになりました。湿地Ⅱの最上部にひとかたまりが咲き始めました。
車道法面の数カ所にワレモコウが生育しています。湿地Ⅰ東側の木道入り口の個体で花が咲き始めました。人気の高い植物なので、周辺域の草刈の時に生育地部分だけは手をつけずに残しているのですが、実はこの植物も刈取草原を生育適地としています。この秋には少し早めに刈取を行おうと思っています。
湿地Ⅲ法面、人工湿地周辺部にナンバンギセルが咲き始めました。今年の個体はやや小さめです。日照りが続いているせいでしょうか。
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7月31日
ユウスゲ、カワラナデシコ、オミナエシなどは以前は身近な「野の花」でしたが、最近では全国の二次草原から減少しつつあるとか。ちなみにユウスゲは福岡県では絶滅危惧ⅠA類、大分、宮崎、鹿児島各県では絶滅危惧Ⅱ類になっています。草原そのものの減少もありますが、草原利用の形態の変化も大きな原因と思われます。上の植物はいずれも草刈をする草原に多く見られます。刈取によって大型のススキやハギ類が減少し、より草丈の低いカワラナデシコなどが生育可能になるのですが、最近では草刈をする草原は減少し、維持管理は野焼きだけのところが多くなっています。そのような草原では種多様性の低下が進み、単純な種構成になっていきます。
樫原湿原では、多様性の高い草原の維持を目的に、必要に応じて草原部分の草刈を継続しています。
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7月29日
夏の主役、サギソウがあちこちに目に付くようになりました。まだ本番ではありませんが楽しめる状態にはなりました。水生のイヌタヌキモの花は人工湿地4番目の池に見られます。湿原内ではミソハギ、アブラガヤ、シロバナサクラタデ、サワギキョウなど、草原ではオミナエシ、カワラナデシコ、キキョウなど花が咲き、夏の風景になりました。
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7月27日
湿地縁の林床には所々にアクシバが生育しています。高さ30cmにもに満たない大きさで、さらに花は葉の下にぶら下がるように咲いていますので、開花を見過ごしてしまうことも少なくありません。ところが、この時期、アクシバの回りを飛び回るマルハナバチを追いかけると、簡単に花を見つけることができます。あそこにも、ここにも、意外とたくさんの花が咲いています。
改訂日本の野生植物4(平凡社)ではアクシバの分布は、北海道、本州、ケアクシバは本州、四国、九州とされていますが、アクシバは北部九州には各地に見られます。佐賀県でも背振山系など各地の産地があげられています。一方ケアクシバは極稀で鹿島市経ヶ岳のみがあげられています(佐賀県植物目録:1981)。両者の違いは、「ケアクシバは若枝の溝に条をなして短毛があり,しばしば開出する長い腺毛をともなう(改訂日本の野生植物4)」とされていますので、若枝に短毛と開出毛がないことを確認するつもりで、若枝のアップを撮影してみました。ところが、多くは無毛でアクシバ型でしたが、稀にわずかに短毛があるものがありました。今回はアクシバとして扱いましたが、九州北部のアクシバとケアクシバは丹念に確認する必要があるかも知れません。
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7月26日
モウセンゴケの花は撮るのがちょっと苦手で、アップは全体が白くとんでしまいます。今年は取り上げるのは止めとこうかと思っていたのですが、かなでさんが良い写真を送ってくれましたので気持ちが変わりました。
モウセンゴケの葉は綺麗に撮れるのは6月まででしょう。雨が当たると痛んでしまいます。ところが葉が痛んだ後頃から開花が始まります。(そろってくれると良いのですが。)人工湿地横の道路法面下では、まだわずかに開花状態が見れます。ただ、花も終わりの時期で、来年、チャレンジし直す方が良いかも知れません(開花は午前中)。かなでさんの写真、深く切れ込んでV字状になった雌しべに注目してください。これがスマホ撮影とは!! 普通、ここまで撮れませんよね。座布団1枚!
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7月24日
先日から気になっていた アキノタムラソウ ですが、少し調べてみました。
林内のやや湿性の立地に生育するアキノタムラソウですが、やけに群生するなあ?と気になり、今回、掘りあげて確認してみました。予想通り、顕著に横に伸びる走出枝を出していました。走出枝は伸びながら次々に新しい株を作っているようです。結果、上の写真の様に密生度の高い群落になったのでしょう。
九州植物目録(初島:2004)や佐賀県植物目録(1981)には、ツルアキノタムラソウ Salvia japonica Thunb. var. stolonifera Murata があげられており、樫原湿原のものもこれに該当すると思われます。 一方で、平凡社の改訂日本の野生植物5(2017)では「非常に変異が多く,西日本には5月に開花する系統や,匍匐枝を出す系統が知られている。」としてアキノタムラソウ Salvia japonica Thunb. の変異タイプとして扱われています。Yリストにもツルアキノタムラソウは取り上げられていません。 現状は「アキノタムラソウ」として一つにまとめられそうですが、現場感覚では、生態的特徴も含めて、一度詳しく調査した方が良いように感じます。
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7月20
コオニユリが咲いて、湿原は夏本番の雰囲気になってきました。日当たりの良い草原のあちこちに濃い朱色の花を総状につけ見ているだけで暑苦しくなります(私だけでしょうか?)。ならばと、林の中に1輪咲いたコオニユリを撮ってみました。花をじっくり眺めるにはこんな場所の方が落ち着きます。付近にはヒメキンミズヒキの小さな花が「私も見てよ!」とばかりに思いっきり花びらを広げていました。その横には、一見、地味なアキノタムラソウが群落を作っていました。ただ、どうも気になることがあります。次回、少し詳しく観察して、もう一度報告予定です。
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7月17日
サギソウが咲きました!(湿地Ⅰ木道から) 今年の初花です。と言っても湿地の中の方で、まだ撮影などには厳しい段階です(写真は300mm望遠です)。これから少しずつ増えていくでしょう。乞うご期待!
ところで、先日のノギランですがリベンジです。私的には「ま、これでいいか。OK!」です。
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7月15日
人工湿地のいつもの所にヒメタヌキモが花をつけていました。結実の有無を確認しようと追跡したのですが14、15日の雨で水没してしまいました。イヌタヌキモもそろそろ開花が始まるでしょう。同属のミミカキグサ、ムラサキミミカキグサも花をつけ始めました。今月末には食虫植物6種の花がまとめて観れるかも知れません。
湿地の周辺にはノギラン、オオバギボウシ、ヤマアワ、コオニユリなどの花が見られるようになってきました。(ノギランのアップに挑戦しましたがいまいちでした。再挑戦します。)
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7月12日
中之島周回路の林縁ではムラサキシキブの花が咲いています。すぐ横にはヤブムラサキがありますが、こちらは随分早くに花が終わり、果実が径3mm程になっています。葉などに毛が多く、ムラサキシキブとは容易に区別がつきますが、花期の違いは今回初めて気づきました。なるほどね、そんな違いもあるのか。
花の写真をアップで撮ったのですが、開花直後ぐらいの花では雄しべも雌しべも集まって楽しそうですが、開花後数日経ったものでは雌しべが「あっち向いてホイ」状態。「えっ、喧嘩でもしたの?」と尋ねたくなりました。今回だけの一時的な不仲なら良いのですが。
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7月7日
カキランが少しずつ盛期を過ぎて行っています。ジュンサイは葉が水面に広がり勢いを増しているように見えますが、花の数は減ってきています。今、見頃なのは午前中はモウセンゴケ、午後はヒツジグサでしょうか。
モウセンゴケは人工湿地Ⅰの道路法面下で観察できます。(スマホ撮影がギリ可能です。)双眼鏡や望遠鏡がある方は、湿地Ⅱ最下部と湿地Ⅳ最上部域にたくさんあります。でもピークは今で、これから急に少なくなるでしょう。
ヒツジグサは湿地Ⅰ市道側、人工湿地、湿地Ⅱ等に見られます。午前中は花が開いていませんので気づきにくいですが、午後1時を過ぎる頃からあちこちに開花が見られるようになります。じつは、最も生育が良いのは中之島裏側の湖畔です。観察用に桟橋(サーヤ橋)を設置してあります。時間があったら覗いてみてください。
ところで、ヒツジグサの花は午後に開き、夕方暗くなると閉じますが、「この開閉を数日繰り返して、その後完全に閉じて水中に沈んでしまいます」と、いろんなところで説明されています。そうだとは知っていましたが自分で調べたことはありませんでしたので、今回、調べてみました。
開花1日目は中央の雌しべ(柱頭盤)がはっきり見えます。柱頭盤の中央には何か密の様な液体が見えます(雌性期)。開花2日目、柱頭盤の上には偽花柱と呼ばれる突起が覆いかぶさって受粉できなくなっています。雄しべは花粉を出しているものとそうでないものに差があるようです(雄性期)。開花3日目、拡大すると花粉をつけている雄しべがあるのが分かります。まだ雄性期のようです。開花4日目、花粉をつけた雄しべはなく、花の中央に向かって曲がり、固く閉じたようになりました。5日目、花は開かず、水面につぼみ状になって突き出ていました。6日目も同様。7日目に水の中に沈みました。
と言うことで、今回の観察では開花は4日間。4日目は受粉には関係なく、締め日ということでしょうか。一連の変化の日数は、個体や花、気象条件などで異なることが予想されますが、花をいくつも調べるのはちょっと大変かな(時間がない)。今年の夏休み、誰か調べてみませんか? ただ、少なくとも1週間は連続で通い詰める必要があります。(考え方によっては、最短1週間で夏休みの課題研究が終われます。ラッキー!)
ちなみに、上の写真の1枚目は開花3~4日目と言うことでしょうか。双眼鏡で花を覗いて、「あの花は開花○日目です!」と説明できるのって、楽しいですよね。誰かやってみませんか。
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6月23日
トキソウが終わりました。次はサギソウですが、開花にはまだまだ時間がかかりそうです。今はどちらも見られませんが、有り難いことにカキランがうまく繋いでくれています。梅雨の季節に似合う花かも知れません。
湿原全域に生育しますが、最も近くで見れるのは人工湿地です。ここでしたらスマホでも普通に撮れます。
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6月12日
ぼんやりしている間に、たくさんの花が次々に咲いて終わっていきます。「ぼ~っと生きてんじゃねえよ!」とチコちゃんに叱られそう。
こんなに開花期間が短かったかなと思うほど、あっという間に終わってしまいました。広場の看板の柱の下で、誰にでも見つかりそうですが、案外気づかれずに、1週間ほどで散ってしまいました。
弁財天鳥居横のオオバウマノスズクサは今年もたくさんの花をつけています。ただ、今年は花の向きがいまいち。これがベストショットです。
イヌツゲはしっかり花をつけているのに、カメラを向けてくれる人はほとんどいません。ちょっと気の毒です。近づいてみると、雌花と雄花の区別があって面白い。雌花には退化した雄しべが4本残っています。花の付き方も雌雄で異なります。まだしばらくは花がありそうですから、機会があったらぜひ一度近づいてみてください。
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5月29日
中之島の林床にシソバタツナミがたくさん咲き始めました。今回は形態的特徴を少し掘り下げてみました。実は平凡社の「日本の野生植物」では、タツナミソウ属の検索表が旧版と新版で異なっています。また他の図鑑類とも記載内容が異なっています。たとえば茎の毛ですが、平凡社の日本の野生植物の旧版では「稜上に上向きに曲がった毛がある」で、新版では「開出毛と下向きに曲がった毛を混生するか、稀に下向きに曲がった毛のみ」となっています。保育社図鑑では「やや上向きに曲がった毛がある」、新日本植物誌では「上曲する短毛が著しい」となっています。どうやら、「茎には上向きに曲がった毛が(顕著に)ある」が正しいようです。でも、今、一般の人が手にすることが出来る専門的図鑑は平凡社の日本の野生植物(新版)であり、これで行くと同定が出来なくなる状況です。いまさら平凡社に文句を言っても仕方ありません。気になる場合は、図書館などを利用して、複数の文献に当たることが必要でしょう。
今回は、茎は直立し、稜には上向きに曲がった毛を混生する、葉の裏面には腺点はない、でシソバタツナミとしました。
(追記6月12日:この記事をアップしてから間もなく、詳しい方から、「過去の図鑑類が間違いで、平凡社の改訂日本の野生植物の方が正しい。写真の植物はシソバタツナミではなくツクシタツナミと考える。」とのご指摘をいただきました。青天の霹靂、「えっ!」でした。1932年の原先生の論文を読むと、シソバタツナミは開出毛、ツクシタツナミは上向きの曲がった毛が密生するとして、顕微鏡写真もあります。論文はシソバタツナミの新種記載に関する混乱を訂正したもので、記述内容から、平凡社の改訂版の記述は、どうやら、この論文に基づいたように思われます。大井次三郎先生が日本植物誌をまとめたのは1953年で、原先生の論文はずっと前に出されています。なのに、なぜ、日本植物誌以降の文献で上向きの曲がった毛はシソバタツナミとなったのでしょうか。なにやら面倒くさいことを長々と書きましたが、極普通種の取り違えは日本中でながく続いてきており、もしかしたら大騒動になりそう?)
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5月27日
いよいよトキソウの季節になりました。ジュンサイ、ヒツジグサの花も多くなりはじめて、初夏の湿原の雰囲気が感じられるようななってきました。
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5月10日
今年も調査の季節がやって来ました。若い研究者が育っていくのを見ると何となくほっこりします(佐賀大農学部)。思わず、「頑張れよ!」です。 キンランは5年を超える継続研究ですが、どうやら今年は開花個体数が減少しているようだとのことです。ノヤマトンボ(オオバノトンボソウ)も同様の様です。一方で、一昨年、桑原老人会が思いっきり伐採した市道沿い二次林の林縁には、新しい個体がたくさん咲いています。里山管理を継続してるつもりなのですが、湿原周辺の森林も気づかないうちに遷移が進行しているのかも知れません。物言わぬ植物たちが、体を張って森の変化を教えてくれているようです。
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5月6日
湿原はサワオグルマがまだ開花中です。場所によっては群落になり綺麗です。ヒツジグサも少しずつ開花個体が多くなっています。(ヒツジグサの花は午後開花)
林域や草原には比較的多くの花が見られるようになりました。キンランは駐車場からの路傍や湿地Ⅰ横林道、中之島周回路沿い、コツクバネウツギやカマツカは林内や林縁を探すと見つかります。コバノガマズミもまだ開花中です。新しい花は強く匂い、近くに開花中の個体があることが分かります。ニガナは小花の数でさらに小さく分けることもありますが、同一集団内にいろいろなものが混在し、一括して「ニガナ」とした方が良いように思います。
林内ではホウチャクソウの花が咲き始めました。しっかり観察すると雌しべが花から飛び出しているものと隠れているものの2タイプがあります。飛び出すのは染色体数が2倍体、飛び出さないのは3倍体だそうです。樫原湿原域では多くは3倍体型のようです。
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4月26日
湿原にはサワオグルマの黄色い花がたくさん見られるようになりました(湿地Ⅳ、中之島裏)。林内や林縁にはコバノガマズミが咲き、キンランも少しずつ花を開かせ始めました。また、いたるところにマムシグサの花が見られます。他に、ハナイカダ、ホオノキ、サルトリイバラ、ホウチャクソウ、アオキ等の花も咲き始めました。多くは駐車場から湿原までの路傍で観察できます。先を急がず、ゆっくり足下の草花を観察しながら湿原に来て下さい。
ザイフリボク、ミツガシワ、ヤナギ類の花はもう終わりました。
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4月18日
今、湿原の主役はサワオグルマです。特に湿地Ⅳ、中之島裏湿地(湿地Ⅴ)には多く見られます。緑色の湿原の中に黄色い花がひときわ目立ちます。湿地Ⅳ縁部のザイフリボクも花をつけています。普段は目立ちませんが、花をつけると独特の形に魅了されます。足下にはタネツケバナ、ノミノフスマも多く見られます。一方、林域で最も目立つのはシハイスミレです。もうしばらくは花を見ることが出来そうです。ツルシキミ、ミツバアケビ、アケビ、カナクギノキ、アオキ等も開花し始めました。
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4月5日
例年より少し遅れてミツガシワがやっと咲いたと思うまもなく、早春の植物たちが怒濤の開花ラッシュ。みんな待てたんだ。
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4月1日
4月に入り、いろいろな花が咲き始めました。多くは咲き始めでまだ本気度がいまいちです。そんな中、ツクシショウジョウバカマ、ケクロモジ、ヒサカキは最盛期です。
それぞれに最盛期があり、一番良い状態を見るには週に一度の頻度で観て回るのが良いでしょう。そうは言っても、なかなか・・・
駐車場から湿原までの路傍や林内ではいろいろなスミレ類が見れるでしょう。中之島では林内にヒサカキの匂いが漂っています。シュンランはそろそろ花数が増えてきそうです。
ミツガシワの花はまだですが、もう咲きそうとの情報もありました。1番花がどこかで咲いているかも知れません。
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3月18日
ツクシショウジョウバカマの花が少しは見られるようになりました。取りあえずアップしておきます。これで良ければ開花個体数は二桁になっています。
シュンランの花穂は日に日に伸びているのですが開花は随分先になりそうです。そして、ミツガシワに至ってはいつになるか分かりません。
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3月11日
ため池横のネコヤナギ雌が開花していました。ツクシショウジョウバカマは月曜4人衆の話では4日には咲いていたとか。どうやら、今年の開花の始まりは例年通りと言うことのようです。
やっと開花したツクシショウジョウバカマですが、例年、開花のスタートはこんな感じです。本人にとっては、とても納得しがたい姿だと思います。もっともっと華やかですよね。今日は、取りあえず「開花しました!」の報告で、本来の花付きの状況は後日再掲します。
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3月7日
ネコヤナギの雄花に続く開花はまだありません。ネコヤナギの雌花、シュンラン、ツクシショウジョウバカマも花芽はまだしっかり閉じています。ただ、少しずつ確実に開花に近づいているのも事実。どれも、桜の花が咲く頃には咲き始めるのではないでしょうか。
ただ、去年の今頃には開花が見られました。3月10日は湿原の野焼きです。その時、もう一度確認します。
花芽の様子:今日の樫原3/7
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2月24日
お待たせしました。やっと今年の開花情報です。
今年も開花トップは中之島裏のネコヤナギ(雄)でした。暖かい日が続いた今年の冬ですが、開花はほぼ例年通りの様です。ため池南側の雌株はまだ全く開花のそぶりはありません。もう少しかかりそうです。
随分永く開花情報を停止していましたが、今年も出来るだけアップしていこうと思っています。