今日の湿原は、咲きそろい始めたサギソウ群落や蜘蛛の巣にかかったハッチョウトンボなど見所満載(?)で、来訪者もいつになくテンションが上がっていました。そんな中、普通だったら思わずのけぞってしまいそうな巨大芋虫が出現。どちらも大きさ(長さ)10~15cmで、息が止まりそうなくらいの鳥肌ものなのですが、これも皆さん、じっくり観察。よく見ると、どちらも実に個性的で美しい。先入観なしで付き合うのが大切なのかも知れません。「すごいね!」ということになったのですが、誰も名前が分からない。「何だろう?、何だろう?」となって、携帯でグーグル検察などもトライされたのですが結局わからないままで終わりました。
ところが、なんと、終わりではありませんでした。皆さん家に帰ってからあの手この手で検索されたようで、夜になってから検索結果メールや連絡が次々に届きました。中学3年の男の子は、グーグル検索からさらに探索が進んだようで、オオミズアオの周辺情報もいろいろと確認したようです。こんな子が未来の日本、地球を救う生物学者になるのかも知れません。皆さん、本当に有り難うございました。
初めての方もぜひ先入観なしで、画面をもう一度タップしてみて下さい。オオミズアオのとげとげの先にはたくさんのアンテナのような毛が付いています。モモスズメの表面はなんだかカメレオンの皮膚のようです。いつか誰かが、こんな昆虫たちの形態をヒントに新しい科学技術を開発させるのかも知れません。
湿地Ⅰ奥部は50%程度の範囲に土砂の流入がありました。H17年度再生事業域の調査区①は、再生事業前はイヌツゲ低木林状態でしたが、再生事業とその後の維持管理でチゴザサ-マアザミ型群落が生育するようになっていました。今回の豪雨で、右写真の状態になりました。優占種のマアザミはほとんど砂に埋まり、コイヌノハナヒゲ、シカクイなど葉の細い植物が主要な生育種になっています。ミミカキグサ類やアリノトウグサ等の小型種はしばらくは復活しないでしょう。砂の除去はせず、しばらくこの状態で植生変化をモニタリングする予定です。
湿地上部に接する林内には15~20cm程度の厚さに土砂が堆積しています。今も滲出水で少しずつ湿地内に流れ込みがありますが、少なくとも、今後の雨での大量流入を止めるため、土砂の除去作業をやっています。24日は月曜4人衆も参加しての作業となりました。イノシシ防止のためのワイヤーメッシュは2カ所で押し流され、土石の下に埋まってしまっています。これも使える範囲で立て直していますが、石の下などに埋まったものは切断して残置。後日、新しいワイヤーメッシュを設置予定です。とにかく急に暑くなりました。熱射病にだけはならないよう、注意して作業をやっています。
開花情報:7月24日
サギソウ、カワラナデシコ、シロバナカワラナデシコ、ムラサキミミカキグサ、ミミカキグサ、コバギボウシ、ユウスゲ、コオニユリ、リョウブ
土砂に埋まった調査区
湿地Ⅰにはモニタリング調査区が9カ所ありますが、このうち4カ所が流入土砂で埋まりました。厚いところでは10cmほど埋まっています。土砂の除去をどうするかは現在検討中ですが、とりあえず今月下旬に植生調査を実施予定です。
湿地上部の防獣メッシュは一部が損壊していますが、よく見るとここで一定量の土砂が止められています。やったねメッシュ君、有り難う! これでだいぶ助かっています。近くにあった佐大辻田研の調査ピンも一部埋まっていました。もしかしたら流されてしまったものもあるかも知れません。土砂に埋まったり、イノシシに蹴散らかされたり、野外調査はなかなか大変ですね。
大災害に言葉がありません。
災害発生から5日、やっと湿原の確認に上がってこれました。予想通り、いろいろと被害が見られました。受け入れるしかありません。ただ、湿地Ⅰへの大量の土砂流入には参りました。最も重要な貧栄養低茎群落生育域が広い範囲で埋まってしまいました。しかも、林内の崩壊地は、今後、少ない雨でも再び崩壊がおこる状況です。とにかく、明日から、土砂流入を止める作業をやるしかありません。
惨状に、集落の方々にかける言葉が見つかりませんでした。湿原周辺、湿原から桑原集落へ下りていく道路沿いの至る所で大規模な斜面の崩壊が起きていました。土砂は道路を塞ぎ、水田に流れ込み、水路を埋め尽くし、あふれた水はハウスの中に流れ込んでいました。これまでも大雨や台風でひどい被害を受けることは少なくありませんでした。でも、そのたびに集落の人々は、手持ちの重機で驚くような速さで災害からの復旧を済ませていました。その機動力は他所では見ることが出来ない桑原集落独特の特異な能力でした。しかし、今回は災害発生から5日経っても手つかずの現場が各所にあります。現状は想像も出来ないくらいに厳しい状況です。さらに、これから先、どれだけの苦労が待ち受けているのか。ただただ唖然としました。集落そのものも甚大な被害を受けておられます。心からお見舞い申し上げます。