5月も後半に入り、例年通りハッチョウトンボが出始めました。雄も雌もまだ若い個体が多く、狭い範囲に複数の個体が群れた状態になっています。雄の若い個体は一見、雌と似ていますが、慣れてくると区別が付きます。写真2枚目は頭部にも縞模様があり、雌であることが分かります。キイトトンボ、モノサシトンボもそろそろ出始めたようです。
トキソウも咲き始めました。まだ全域とまではいきませんが、群落状の開花がいくつか見られるようになりました。弁財天鳥居横のオオバウマノスズクサも開花です。
湿原では、これらの生き物に近づけない場合がほとんどです。写真を撮る場合は望遠機能が必須です。観察の場合は双眼鏡があると便利です。ただし、ハッチョウトンボは木道のすぐ横まで来てくれることもあり、スマホで撮影出来る幸運に恵まれることもあります。日頃の行いが大切かもしれません。
今日(5/16)は地元の方からジュンサイをいただきました。軽く湯通しして、酢醤油で食べることにします。所有する溜め池に生育するものを収穫して、時期になると七山の「鳴神の庄」に出荷されています。今は正にその時期、朝早めに行けば手に入ります。
それにしても、最近の若い世代はジュンサイのことを知りません。50代がその境目のようです。湿原でジュンサイのことを紹介するとき、知っていれば「あなた、50代以上ですね」と言えばほぼ当たります。
「えっ、あんたシッポはどうしたの? 大丈夫かい?」と思わずつぶやいてしまいました。木道の上で動かないので「死んでる?」と思い、足音をドンとさせたら元気に逃げていきました。それにしても派手に切ったもんで、この先が思いやられます。数ヶ月で再生するとかで少し安心しましたが、カナヘビ君にもいろいろ苦労があるようです。
今、湿原の林域を歩くと、一目で調査中と分かる水色のネットをかぶせたものがあちこちに見られます。近づいてみると、ネットはキンランとノヤマトンボ(オオバノトンボソウ)にかけられています。その数100個以上。昨年までも設置されていたのですが、さすがに今年は目立ちますので、来訪者から尋ねられます。「佐賀大の辻田先生の研究室がラン科植物の花につく害虫の研究をされています。」と説明しています。しばらくしてまた会うと、今度は「あっちの方に、袋のかぶせ忘れがありますよ!」と教えてくれる方もあります。「有り難うございます。じつは・・・」と野外研究の大変さや、辻田研究室の5年以上にわたる継続的な調査、いろいろな大学からの研究者の来訪など、話が長くなることもしばしば。「水色のネット」は害虫を防ぐだけでなく、来訪者に自然研究への理解や興味を抱かせる効果もあるようです。
今日の樫原:枯れマツ伐採
樫原湿原では最近になって枯れマツが目立つようになってきました。数年前に20本以上を伐採処理したのですが、再び「枯れ」の波がやってきたようです。幹の下部の方にはヒトクチダケが発生しているものもあり、1年以上前から枯れが始まっていたことが推察されます。(因みに、ヒトクチダケは枯れてから2年目のマツに発生するとのこと)
樫原湿原には来訪者が多く、安全管理上問題ありと判断されるものは早めに伐採することにしています。今日(5/9)は月曜4人衆に手伝ってもらって切り倒すことにしたのですが、相手は直径30cmを超える40年生の大木(我々にとっては大木)です。手前の市道方向に倒せば後処理が簡単なのですが、左側木道方向+後ろの林の方向に傾いていること、下枝を落とす段階で枯れが進行していて幹にあまり粘りがないと思われたことから、「切り込み(受け口)を入れて、その後、反対側から切り進み(追い口)、中心部を残し(ツル)ながら受け口方向に倒す」という教科書通りの伐採方法は無理と判断。幹上部にロープをかけ、林内方向に引っ張りながら切ることになりました。プロならここでエンジン付きウインチが登場するところですが、あいにく今日は手動ウインチも持ってきていません。枯れ松と林内の松をロープで繋ぎ、そのロープの中央部に新たなロープをかけて、このロープを4人衆が引っ張るという、いつもの人力作戦。うまく行く確率は4割程度かなと思いながら切り込みを入れ、4人衆が引っ張ると、何と言うことでしょう、ほぼ計画通りに倒れてくれたではありませんか。すばらしい!すばらしい!
伐採後は小さく切断して搬出。何事もなかったかのような林の雰囲気になりましたが、真新しい切り株が残り、「枯れ松伐採ミッション」があったことをさりげなく教えてくれます。